雄太のミュージック日記

60秒で心が整うクラシック。 しばらくは、少しゆっくりとした歩調で綴っていきます。 日々の波の合間に、静かな音の物語を置いていきます。

《有給休暇》『トリスタンとイゾルデ』再演|フランクフルト|渇望のうねりは一瞬でない。その持続こそが最高に心地よい。

長年住んだオランダを去る頃に初めて聴いた「トリスタンとイゾルデ」(ステファン・グールド/リカルダ・メルベートの組み合わせ)の想いが、ふと過りました。歌手をとても大切にする新演出。

対して、この4月4日にケルン歌劇場で、その「トリスタンとイゾルデ」を当時指揮したマルク・アルブレヒト指揮の「ワルキューレ」を聴いたからこそ、より興味を引きました。

今回のフランクフルト歌劇場再演。地元の人の話を聞くに、「作り直しと同じ。」と言っていました。

https://www.youtube.com/watch?v=JTFG8hV2NB0

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イヤホン推奨ですが、音なしでも本文を楽しめます♪ (ドイツ語ですが、要点を的確に伝えている良い動画です)

トーマス・グガイス音楽監督:『トリスタンとイゾルデ』深堀り(ドイツ語解説)

【クリックで展開】グガイス音楽監督の解説動画の主なポイント

ここで語られていること主旨 (1)「曖昧な和声でありながら、現代音楽の先駆となった」 (2)この和声は、「絶え間ない贖罪を求める飽くなき渇望」 (3)旋律と和声でどのように描写しているか を具体的に解説 (4)「すべての願望の実現として音楽的に体験される」

なので、フランクフルト歌劇場の、いま頭角を出してきているトーマス・グガイス指揮の「トリスタンとイゾルデ」を聴きたくなったのです。

正直、正反対の「音の光」みたいなもの。マルク・アルブレヒトのワーグナーって、明るく柔らかく音を包み込む。透明な淡い感情が入ってくる。それは、有名指揮者のCDで聴いた演奏から見たら、もう少しコクがあってもいいのに、と思うもの。だけど、回想するに、十分納得する内容に違いがない(2018年1月)。

【クリックで展開】マルク・アルブレヒトとの音楽の違いについての思っていること

今回の、トーマス・グガイス指揮のワーグナー。2024年GW中の「タンホイザー」に続き、2度目。この時の「タンホイザー」は、演出が激しい読み替えなので、その沈着冷静かつ落ち着いた音楽。そこには、同居してくるはずの冷たさが、実はないので、とても素晴らしかったです。

今回の「トリスタンとイゾルデ」:マルク・アルブレヒト(オランダ国立オペラ)の外から包み込む柔らかさに対して、トーマス・グガイス(フランクフルト歌劇場)は、内側に渦巻く包み込めないような緊張感があるように思いました。

©バルバラ・アウミュラー|第1幕
トリスタンは、”生と死の境界”の守護者。イゾルデは、内面の真実を放ち理解を求める姫。
再演というのに、密度の濃さは魅力的でした。音楽が深く演出によりそっているからでしょう。新演出時は、「死や過去」の枠組みが注目されて、頭の解釈で注目されていたそうです。今回、生の舞台を観るのが3回目です。純粋に「音楽に浸りたい」気持ちで出かけました。

元々の演出のテーマは、《死の直前こそ、愛が完全な形で成就する唯一の瞬間》ものだったそうです。

【クリックで展開】3つのテーマ ― 純度の高い”愛”は、なぜ「心の奥」にあるの?
  • ① 押し込めてきた思いや言葉が眠っている場所: 自分でも気づかない心の奥。
  • ② 大切なものを失った痛み: 戻らない時間・取り返せない感情の波。
  • ③ なぜ心が独りになってしまうのか、その心根: 外では満たされない、内側の感情。

この三つが根底を貫いている。その流れに寄り添った音楽だったからでしょう。

付け加えるなら、飢え/求め/震えという持続するプロセスこそが、愛の純粋な美しさとしての成就だと思うのです。

歌手:アンサンブルの熟達が支えた夜

軽く歌手のことだけ。フランクフルト歌劇場は、ドイツ語圏指折りのアンサンブル歌手が充実している劇場。どこの一流歌劇場で歌っても存在感が映える歌手が多いです。CDでも、アンサンブル歌手で賄える良いソフトがあります。

©バルバラ・アウミュラー|第1幕
イゾルデは、隔絶と孤独、閉じ込められた世界の感情。ブランゲーネが、現実に立つ側。

今回は、歌いこなしているブランゲーネ役がやはり突出して上手かったです。
日本でこの役を歌っているそうで。狂言回し的存在感抜群。

©バルバラ・アウミュラー|第3幕
満たされないまま続いた渇望。その持続は、新たに生まれ、静かに満ちる光となる。

クルヴェナール役は、いまや時の人。マルケ王も、安定した存在感。

最終日の充実したアンサンブルが放つ、理屈が存在しない“のたうち回る渇望”は、やがて“愛の死”の音楽に抱き取られ、静かな余韻へと沈んでいく。その感動の中に浸りました。

Conductor:Thomas Guggeis Director:Katharina Thoma
Revival rehearsed by Orest Tichonov
Set Designer:Johannes Leiacker Costume Designer:Irina Bartels
Lighting Designer:Olaf Winter
Chorus Master:Álvaro Corral Matute
Dramaturge:Mareike Wink
Tristan:Marco Jentzsch       Isolde:Miina-Liisa Värelä
King Marke:Andreas Bauer Kanabas Brangäne:Claudia Mahnke
Kurwenal:Nicholas Brownlee
Melot:Taehan Kim         Shepherd:Theo Lebow
Helmsman:Pete Thanapat
Oper Frankfurt's Chorus Frankfurt Opern and Museumsorchester
Saturday 11th April 2026 Start 5:00 pm
Duration c 4 hrs 50', inc 2 intervals (25 mins & 35 mins) after c 1hr 20 and c 1hr 15

歌手陣が大幅にバージョンアップしていたこと(隣の席の現地の人は、前回見ているとのことでした)。前へ前と進む音楽がとても充足していて、とてもよかったです。

海外出張で有給休暇を取得した時の話。帰国日を1日遅らせて帰国するとき、その1日遅らせた理由が有給休暇だった。その取扱いで、飛行機の運賃は、会社の規程では、誰が負担するの?個人OR会社どっち?

帰りの飛行機代一部自己負担(総務部のお伺いは踏まえたうえで)で、フランクフルト歌劇場「トリスタンとイゾルデ」再演最終日に出かけました。そのうえで出かけました。

最後に、出張編を読んでいただいてありがとうございました。無事終わりました。
13日(月)早朝、東京に着きます。その足で、出社です。
ハイブリッドワークを選んでいる人が多い会社です。